■アニメ製作委員会と許諾
自治体や商店街が、自身の地域がアニメの舞台になっていることに気づき、アニメ聖地巡礼の展開を考える。多くの場合、アニメ作品の放送や映画上映が終わる頃になります。
それは無理からぬこととはいえます。
アニメファンが地域に来訪し始めるのは、アニメの放送がはじまってから。そのアニメファンが地域に目立つようになって、自治体や商店街が気づきます。ただ、気づいたからといってすぐに行動を起こすわけではない。そこから企画書にまとめ、部内で相談し、上司の承認をもらうことになるでしょう。
ただし、部内で決着しても、自治体や商店街が好き放題にできるわけではありません。また、アニメ作品がその地域を舞台にしているからと、地域の住人が自由にできる、というものでもありません。
アニメ作品には著作権があります。商品やイベントでアニメ作品の絵、映像を使用するには、権利者の許諾が必要です。この権利者が多くの場合、アニメ製作委員会です。
アニメ製作委員会とは、複数の企業からなります。1作品の制作費を委員会メンバーとなる企業が持ち寄る。そして、アニメ作品から発生する権利をそれぞれが独占的に取得します。映画化の権利、音楽ライブを行う権利、パチンコ・パチスロを販売する権利、フィギュアを販売する権利などです。収益がでると、分配されます。
自治体や商店街は、このアニメ製作委員会から許諾を得て、アニメ作品を活用することとなります。ここからがアニメ聖地巡礼ビジネスの本番です。
■もたもたしてたら、終わってしまう
まず、毎週放送されるテレビアニメの話数は全12話が多く、その場合は3ヶ月で最終回を迎えます。ファンの存在に気づき、アニメ作品をチェックし、地域内で相談しているうちに、アニメの放送は終わってしまうでしょう。
放送の終了はすなわち、権利を持つアニメ製作委員会の節目を意味します。人気があれば続編が作られ、アニメ製作委員会は継続します。人気がなければ、休眠、解散となって一旦終了を迎えます。
休眠、解散となった場合、どうなるのか。
地域からアニメ製作委員会に連絡をしても、返事が戻ってこないことが往々にして起きます。OKにしろ、NGにしろ、地域は返事がすぐにほしいと思うでしょう。しかし、アニメ製作委員会としてはメンバー全員の確認が必要です。ひとり(一社)でも欠けると、担当者としては返事はしたいけどできない、という状態になります。どの企業もアニメ作品を何本も抱えています。目の前の仕事に忙殺され、過去の作品は後回しになりがちです。
返事に半年間も待った、1年も待った、という地域の声を聞きます。そうした地域に共通しているのは、アニメ作品の放送が終わって、かなりの時間が経ってから連絡しているという点です。
■アニメ聖地巡礼を仕掛けるタイミング
地域からアニメ製作委員会に連絡するのはどういったタイミングがいいのでしょうか。
ベストはアニメ製作委員会が組成されたらすぐです。これから売り出していくぞー、とメンバーがやる気になっているときに情報をキャッチして、すぐに相談しましょう。
それがわかるのは、ロケーション・ハンティング(ロケハン)です。
アニメを制作するには、地域を取材する必要があります。ロケハンに来ているということは、アニメ製作委員会が組成されたということ。このタイミングで相談するのがベストです。
つぎに予告編動画が公開されたり、アニメ誌に掲載され始めたタイミングです。宣伝・広報活動が活発になっているタイミングは声優のキャスティングや稼働するイベントがつぎつぎと決まっていく時期です。プロモーション担当者とお互い胸襟を開いた相談ができるでしょう。
最後は、放送中。アニメ作品は序盤の数話で、その人気が占われます。視聴率、TwitterなどSNSの話題性などから、アニメ製作委員会はアニメ作品の行く末を推し量るのです。イケる、と思えば、その作品の次の展開を考え始めますし、これは・・・となれば、違う作品に意識がいきます。どちらにしてもアニメ製作委員会のなかでは決着がついているのが、この時期。地域への対応に差が出ます。
鉄は熱いうちに打て。
地域はアニメ作品のプロモーション期間内にアニメ製作委員会と相談しましょう。