権利を守りすぎると、キャラクターは広がらない

ライセンス

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個人運営のキャラクター、伸びる要素があるのに企業キャラクターほど伸びていない、ということ多々あります。
また、団体で運営している地方のキャラクターでも個性はあって面白いし、活動的なのにいまいち羽ばたいていかない、ということもあります。

もしかすると、原因は「権利の守りすぎ」かもしれません。

■権利は人に渡すもの

海外ではライセンスエージェント、日本では出版社がクリエイターの代わりに権利交渉をすることが多いです。
このライセンスエージェントの役割は何かというと「権利を人に渡してお金に換える」ことです。

ここ、すごく大事です。

お金を得るために、権利を人に渡している、のです。

たとえば、テレビアニメにするときにどうなるのかというとテレビアニメ専用のコンテンツの権利が生まれます。
原作とは違う権利になるので、原作は「原作権」の範囲でしか収益を得られません。
テレビアニメの方のイラストを使うと、テレビアニメの方の権利者にお金が行き、その一部が原作側にまわってくるようになります。

また、テレビアニメ放映中は原作の方ではグッズなど作らないこと、というような取り決めが生まれることもあります。
このように、コンテンツの権利を人に貸す、そして自分の権利の一部が行使できなくなる、という状態を作りながら、コンテンツを広げていくのがライセンスエージェントや、出版社の役割です。

コンテンツを個人運営している人や、団体であっても小規模で「自分たちのやりたいようにやる」というのを心がけているところでは「他社に権利を与えるとやれることが減るのでリスクになる」と考える人がいます。
この考え方をしてしまうと、人に権利を貸すことに消極的になり、周りの人を巻き込めなくなってしまいます。
そうすると、自分で動く以外にコンテンツの成長する要素がなくなるので、広がりが出てこない、となってしまうのです。

■権利の渡し方のコツは小さな権利を作ること

とはいえ、誰かに権利を奪われて自分で使えなくなった、、、という話もたまにあります。
契約を結ぶときには権利の帰属はどちらになるのか、独占なのか非独占なのか、期間はいつまでなのか、契約終了はどうすればできるのか、等を確認するする必要があります。

そして、権利を人に貸すときに大事なのが「小さな権利にして貸し出す」ことです。
たとえば、フィギュアの製作する権利を独占で他社に渡すとしましょう。
「フィギュアの権利を独占で3年間渡す」と契約に記載すると、あらゆるフィギュアを契約した先の会社しか作れなくなります。
著作権者自身も作れない状態になります。
もしも、その会社がフィギュアを作ってくれなかったら、3年間フィギュアを作れないまま、権利が凍結されて終わってしまうだけ、となってしまいます。

だったらどうすれば良いのかというと、「1/16フィギュアの権利を独占で1年間渡す。毎年契約は自動継続する」というように権利の中味を細かくしていくと良いのです。
フィギュアのサイズを決めてしまえば、他の形のフィギュアは作ることができます。
また、契約も1年単位にしてしまえば、もしフィギュア製作が止まっても1年で権利を取り戻すことができます。

このように、権利を細かく分割して、そしていろいろな人に渡していくと、「権利を使う人」が増えるので商品が増えたり、コンテンツが増えたりしていきます。

■東北ずん子での権利処理

東北ずん子でも権利を細かく区切って使ってくれる人を増やすような取り組みをしています。
東北ずん子の場合は、「クリエイターは非商用の範囲で自由に使える」「東北企業は商用でも無償で使える」というような形をとっています。

無償で使われて利益はどうなるの?と聞かれますが、東京の会社とかからライセンス料をもらったりしているので成り立っています。

このように、権利処理の形を上手くするとそれだけで「使ってくれる仲間」が生まれて、そしてその仲間が権利を使ってコンテンツを広げてくれる、という体制を作ることができます。

「権利は守るもの」という気持ちに一花ってしまいやすいですが、ことコンテンツ運営に関しては「権利は人に使ってもらうもの」です。
人に権利を使ってもらってそれでコンテンツを広げていくことが重要なのです。