間違いだらけの自治体視察「アニメ聖地巡礼」

地域
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面白いアニメ作品があるから、地域が盛り上がる

アニメ聖地巡礼で成功した地域への視察が人気です。アニメ『らき☆すた』の埼玉県久喜市鷲宮、アニメ『ガールズ&パンツァー』の茨城県大洗町、アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の埼玉県秩父市など代表的な地域に「アニメ聖地巡礼」の成功を願う視察団が訪れます。

アニメで盛り上がる地域を視察し、担当の職員や町のリーダーに地域オリジナルのグッズ展開や宣伝、広報展開を聞き取る。アニメを絡めた地域イベントに参加し、訪れるファンからヒアリングをする。

そのすべてが無駄である、とは言いたくありません。とはいえ、往々にして無駄なのです。

なぜなら、アニメ聖地巡礼で盛り上がる地域は、地域の力でその成功を手に入れたわけではないからです。とにもかくにも、大ヒットしたアニメ作品ありきです。優秀なクリエイターが集い、全力で制作し、その結果、超絶に面白いアニメができて、たくさんのファンに届く。アニメ製作委員会は大ヒットの勢いを絶やすまいと丁寧なプロモーション、商品展開を持続的に行う。制作するクリエイター集団とプロデュースをするアニメ製作委員会は、アニメビジネスにおける両輪です。両者がしっかりと手を携えてこそ、大ヒット作品が生まれます。アニメ聖地巡礼の成功は、その結果です。

面白いアニメ作品があるから、その舞台となった地域が盛り上がる。この構図を忘れてはいけません。
地域を視察することは、いわば宝くじに当たった人に話を聞きに行くようなもの。ラッキーマンに大金の使い道を聞くことはできますが、宝くじを当てる秘訣を聞くことに何も意味はありません。

アニメ作品を作った人に聞く

誰に話を聞きに行くべきか。答えは簡単です。
アニメ作品を作った人に聞きに行くのです。クリエイターとアニメ製作委員会です。

クリエイターには、なぜこの地域を舞台にしようと考えたのか、そして、どのように地域をお話に活かしたのか。

アニメ製作委員会には、アニメ作品をどのように企画し、出資し、制作し、プロモーションをしているのか、アニメ市場の現状をどのように捉えているのか。何より地域とのタイアップをどのように考えているのか。

作り手の話を聞き、どのようにしたらご自分の地域が選ばれるのかを考えましょう。

僕はアニメ聖地巡礼を考えるとき、いつも思い浮かべるふたつの要素があります。聖書と聖人です。聖地があるなら、そのふたつもある。
アニメ聖地巡礼における聖書は、アニメ作品そのものです。聖人はクリエイターをはじめとした制作・製作関係者です。
聖書を読まず、聖人の話も聞かずに聖地に向かう行為は観光旅行として楽しいとは思いますが、意義深いものにはならないでしょう。

「宝くじに当たったら、どうしたい?」

最後にひとつだけ。
今までお話ししたことは、宝くじに当たっていない場合の話です。もし、ご自分の地域が大ヒットアニメ作品の舞台になったら、話は別です。盛り上がっている地域の話は大いに参考になるでしょう。
ただ、その頃には他人の話など興味はないかもしれませんが。

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