アニメ施策の担当者が楽しむと、楽しさは伝播する

地域

■楽しそうにしていると、楽しいことが好きな人が集まってくる

アニメ地域おこしを行なっている担当者は、ぜひ自らが楽しんでください。自治体の観光課、地元の企業や組合で思いがけずにアニメ施策の担当者になることもあるでしょう。「アニメに詳しいわけでも、そんなに好きなわけでもないのに……」と困惑しているかもしれません。それでも楽しんでください。アニメ施策は楽しむことがマストなのです。楽しくしないと、何も伝わりません。

アニメは楽しいから、テレビやネット配信で人々がアニメを見ます。楽しいから、世界中で愛されます。その結果として、アニメの舞台となった地域へと足を運びます。地域を訪れた人々は、作品の追体験をしたいと思い、舞台となったスポットで撮影をするでしょう。もしくは地域の方や自分と同じアニメファンとの交流を楽しみたくて、飲食店や観光案内所に行くでしょう。

こういったことはすべて楽しいから行われます。

自分が楽しそうにしていれば、楽しいことが好きな人々が寄ってきます。逆につまらなそうにしていると、人々はサーッと引いていきます。担当者がアニメ施策を楽しんでいる姿を見れば、まわりのアニメ好きは安心して集まってきます。楽しさは伝播するのです。

■楽しむ技術があります

アニメ地域おこしは、担当者こそが楽しむことと書きました。とはいえ、どんな作品でも楽しめるものでもありません。私は仕事でアニメに関わっています。多忙のときは、つい楽しむことを忘れて、機械的にアニメ作品を視聴し、原稿や企画を組んでしまうときがあります。そんなときは、アウトプットがどうしても味気ないものになるような気がしています。そこで、楽しむ技術です。

「楽しい」と感じるのは、自分の興味をそそるからです。目の前のアニメ作品のなかで、自分の興味を掻き立てる何かはないでしょうか。まずはスタッフから探し始めるといいでしょう。

・だれが監督をしているの?

アニメ作品には「監督」がいます。宮崎駿監督や庵野秀明監督の名前はご存知でしょうか。監督とは、作品の制作責任者です。面白さを追求し、クオリティをキープする。どの作品にも監督の意向がつよく反映されます。「このアニメ、おもしろい」「あのアニメもおもしろい」と思っていると、おなじ監督の作品であることがしばしばです。

そこで、アニメ地域おこしで担当するアニメ作品の監督をした人物をネット検索して、過去の監督作品を調べましょう。自分が好きな作品がそこにはあるかもしれません。そうすればシメタもの。過去の作品で、どの部分が好きだったのかを思い出してください。そして、新しい作品の中にそれを見つけましょう。興味のフックがひとつ見つかりました。

・だれがキャラクターデザインをしているの?

アニメ作品には多くのスタッフが関わっています。「絵」の責任者が「キャラクターデザイン」です。キャラクターの仕草や表情、小物などをアニメ制作向けに設定しています。その設定がアニメ全体の芝居を決めます。アニメの人気はキャラクターで決まるといっても過言ではないでしょう。ひと目見て「このキャラクター、好き!」と視聴者に思わせなくてはいけません。キャラクターデザインの担当者をネット検索し、ほかにどんな作品を作っているのかを調べてみましょう。アニメ以外にも画集やマンガなどのお仕事もしているかもしれません。

アニメファンは「絵」が好きです。キャラクターデザインを担当したスタッフの他の仕事を知ることで地域に集まるファンが他にどんな作品が好きそうか、予測ができます。アニメ施策の幅が広がるのです。

・脚本家は誰ですか?

脚本とは、アニメ作品の骨組みです。オリジナル作品なら原作に相当します。マンガや小説の原作がある場合は、既存の作品をアニメ向けに再構築します。脚本をもとに絵コンテが作られ、作画や背景、アフレコなどが行われるわけですから、まさに骨組みです。

脚本家がどういった人物なのか、ネット検索をしましょう。「このお話、おもしろいなあ」と思ったら、その脚本家の他の作品もチェックしましょう。

・美術監督は誰でしょう?

アニメ地域おこしにおいて、もっとも重要なの役職かもしれません。アニメ作品の背景を描く美術監督です。アニメの世界観を決めるのが「背景」です。西洋風のお城を描けば異世界モノの雰囲気になるし、宇宙を描けばロボットSFモノかもしれません。

そう、ご想像のとおりです。美術監督が地域の風景を描くから、地域はアニメの聖地となるのです。そのように考えると、目の前のアニメ作品の美術監督が誰なのか、知りたくなってきませんか? さっそく、ネット検索をしましょう。

美術監督も他の役職と同様に、多くの作品を手がけています。ぜひ他作品もチェックしてください。その美術監督らしさを見つけることは、興味がそそられる作業となるでしょう。

以上、楽しむ技術でした。

アニメ制作スタッフの役職から興味が出るポイントを探る方法をお話しました。私は対象に興味が掻き立てられないときは、相手を知らないからだと思っています。どんな対象でもより深く知ることで、俄然、興味が湧いてきます。まずはネット検索からはじめてみましょう。

■自分の興味がある作品で、地域おこしの施策を考える

楽しむ技術をお話ししましたが、それでも、興味が掻き立てられない場合はどうしたらいいのか。

いっそのこと、目の前のアニメ作品を忘れてみてはいかがでしょうか。興味がない作品で企画を進めると、クリエイターなどの関係者に迷惑をかけがちになりますし、冷めた気持ちはファンにも伝わります。良いことはありません。

そのかわり、自分の興味がある作品、人物で地域おこしの施策を考えるのです。アニメに限定する必要はありません。映画でも音楽でも舞台でも、すべてのコンテンツが対象です。自分の興味に従って、縦横無尽に考えてください。

コンテンツで地域おこしをするということは、娯楽による地域おこしを意味します。ここで武器になるのは、情報の引き出しの多さです。興味があるということは、そのコンテンツに対して情報を多く持っているということです。誰が監督し、企画はどんな風に進められて、どんなファン層を獲得しているのか。すでにご存知でしょう。カードをたくさん持っている方が有利なのは、どんな勝負でも同じです。

要はコンテンツを介して、多くの人が地域を訪れ、お金を落としてくれればいいわけです。そのためにはコンテンツの権利元が許諾し、そのコンテンツのファンに広く情報が届くことが重要です。アニメ作品の舞台になることは必要条件ではないし、ひとつのアニメに固執することが正解ではありません。舞台になったアニメを起用することは、権利処理の作業とファンへの広報作業の手間を省けるからです。

逆に考えれば、手間を惜しまなければ、ご自分の興味を出発点としてコンテンツによる地域おこしが行えるのです。そして、手間は発生しますけど、前述の「楽しむ技術」でお伝えした調べる作業は必要ありません。もともと興味があるのだから、とっくに多くのことをご存知でしょう。

アニメ地域おこしの肝心な部分は自身が「楽しむこと」です。その気持ちに達するために、遠回りをする必要はありません。好きな作品で企画を考えて、どんどん近道をしましょう。